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醫市報(いしほう) Medicalcity Report
栄養夜話 第1話
焼肉ってうまいですね。都城は焼肉天国ですからほんまもんの肉が格安で食べられます。極上の霜降り肉をかるくあぶって、脂がしたたるのをガブってやるのもうまいですが、ホルモンの歯ごたえと旨みは絶品、負けてませんね。それと、好みの違いはあるかもしれませんが、レバ刺、これも独特の旨みというか、ほんのりとした甘みがいいですねえ。
レバ刺の甘みは肝臓にたくわえられたグリコーゲンの甘さです。肝臓はブドウ糖をグリコーゲンの形でたくわえる一方、必要に応じてグリコーゲンをブドウ糖に分解して他の臓器(脳・心臓・腎臓など)に送ります。肝臓の働きが悪くな ると、脳や心臓の働きも悪くなるのはこのためです。
脳や心臓などの臓器は、普通はブドウ糖を燃やしてエネルギーに換えています。酸素が不足したり(呼吸困難のとき、運動時)、ストレス状態になると、ブドウ糖ではなくケトン体を燃料にしてエネルギーを作ろうとします。
ケトン体って耳慣れない栄養素ですよね?実はケトン体が重要な栄養素であることは、あまり知られていません。それどころか、糖尿病の時に血液中に増えてくるものですから、体に悪影響を及ぼす物質というネガティブなイメージがあります。
ケトン体は、アセチルCoAと いう一種の油が水に溶ける形に変化したものです。酸素不足のときなどには、細胞はブドウ糖を燃やしてエネルギーに換えることができにくくなります。でもアセチルCoAだったら、酸素不足のときでも十分にエネルギー源になりえます。
酸素不足の時には、肝臓がアセチルCoAを臓器に送れば言い訳ですが、残念ながらアセチルCoAは水に溶けませんから(油ですから)、血液に溶かして各臓器に送ることができません。そのため、肝臓はアセチルCoAに水酸基(酸素と水素)をくっつけてケトン体を作り出します。ケトン体は水に溶けますから、血流に乗って臓器に到達し、そこでふたたびアセチルCoAに戻されてエネルギー源となるのです。インスタント麺をお湯で戻すようなものですね。
肝臓は、グリコーゲンからブドウ糖を作り出すのが本職ですが、体の中の酸素が不足すると、ブドウ糖の代わりにケトン体を作って各臓器に送ります。健康な人でも、ブドウ糖を使ったりケトン体を使ったりという状態が刻々と変わるのが普通です。臓器が欲しがる栄養素の種類を分刻みでチェックして補給しているのが肝臓なのです。
まるで優秀なコックさんが24時間体の中にいるのと同じことですね。
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